スコッチ以外のウィスキー

 スコッチ以外のウィスキーと言えば、アイリッシュ、カナディアン、アメリカン(バーボン)、ジャパニーズと言ったものが有名でスコッチとあわせて五大ウィスキーと呼ばれている。

アイリッシュ・ウィスキー
 アイルランドで作られるアイリッシュ・ウィスキーの歴史は古くウィスキーの原点とも言っていい。
 1172年、ヘンリー2世によるアイルランド遠征の際にイングランド軍が、ウイスキーの前身とみられる蒸溜酒について記録している。アイルランドのスコット族が現在のスコットランドに移住した際にウィスキーもスコットランドに持ち込まれたという。つまり、スコッチの祖先と言うわけだ。
 初期は麦芽のみのウィスキーだったのではないかと想像するが、現在のアイリッシュウィスキーは大麦、ライ麦、小麦などをあらかじめブレンドしたものを原料としている。使用する大麦はすべて発芽させたものを使用するのではなく発芽させないものを使用することが特徴だ。これは政策により麦芽に高額の税金が課せられるようになり、税金の支払いを逃れるために麦芽の量を減らしたためだ。発酵には当然麦芽を使用するが、ピート香をつけていないことがスコッチとは異なり、蒸溜は単式蒸溜機で3度蒸溜する念の入れようだ。
余談だが、アイリッシュウィスキーのつづりは”WHISKEY”、スコッチは”WHISKY”である。これはダブリンの業者が地方のウイスキーよりすぐれている事を誇示するため発音の変わらない“E”を入れたことが始まりで、現在では”E”を入れたWHISKEYがアイリッシュウィスキーの特徴となっている。
話は戻って、このようにして出来たウィスキーは「シングル・ブレンデッドウイスキー」と呼ばれる。溜出液の中溜部分を樽詰めして熟成したものを「ストレート・アイリッシュ・ウイスキー(原酒)」と呼ぶ。
 1970年代半ばまで、ストレート・ヴァッティングで主に造られていたが、現在では、原酒はベースとして使用され、トウモロコシを主体としたグレーン・スピリッツをブレンドしたタイプが主流。これらは「アイリッシュ・ブレンデッド・ウイスキー」と呼ばれている。アイリッシュウィスキーの特徴は、スモーキー・フレーバーがなくすっきりとしていて、まろやか。アルコール分が平均85%と高濃度なため副生成分による雑味が少なく、スコッチ・ウイスキーのモルト原酒に比べて軽いのが特徴。
 17〜8世紀は人気も高く、多くの蒸留所があったようだが、20世紀初頭の大英帝国からの独立戦争の最中、ダブリンで市街戦が繰り広げられた結果、その製造が衰退。また、独立後は大英帝国の商圏からの締めしやアメリカの禁酒法で最大の市場を失ったりするなどして衰退した。
 衰退してゆく中でいくつものブランドが合流し、現在は1608年創設のアイルランド最古の蒸溜所ブッシュミルズ、1975年創設のミドルトン、1987年創設のクーリー、最近では2007年キルベガン蒸留所も蒸留を再開し、全部で4蒸留所が稼動している。


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カナディアン・ウィスキー
 カナダで作られるカナディアン・ウイスキーは、ベース・ウイスキーとフレーバリング・ウイスキーの2つの原酒をブレンドしてつくられるいわゆるブレンディッドウィスキーだ。
 ベース・ウィスキーはトウモロコシを主原料に、少量の大麦麦芽で糖化→発酵→蒸留(連続式蒸留機)の工程で製造し、3年以上熟成させることが義務付けられている。樽はカシ樽などバーボン熟成に使われた古樽が使われることが多い様だ。アルコール度数は94-95%と高く、軽い風味が特徴だ。
 フレーバリング・ウィスキー はライ麦を主体に、トウモロコシや大麦麦芽を加えて糖化→発酵→連続式蒸留機→単式蒸留機で蒸留を重ねる。熟成樽はブランデー古樽、シェリー古樽、バーボン古樽、ホワイト・オーク新樽、古樽などを用い、3年以上の熟成が義務付けられている。穏やかな穀物の風味が良く残っていることが特長だ。
 ブレンドされたときの原料比率がライ麦50%以上のものをライ・ウィスキー(RyeWhisky)と表示できる。カナディアン・ウィスキーは世界のウイスキーの中でもっともライトで香り高くスムースな口当たりが特徴であり、ソーダ割りなどが良く合い、また、カクテルのベースなどにもよく使用される。
 カナディアン・ウイスキーは、1763年にカナダがイギリス領となり英国人の移住が多くなってきた頃から作られていたようだ。1769年にケベックに初の蒸留器が入ったと言う記録があるが、1775年から始まったアメリカ独立戦争に批判的な英国系移民がカナダに移住し穀物を生産を始めた頃から本格化したようだ。カナダへの移民が増加したため穀物が過剰生産となり、製粉所が余剰穀物を使って蒸溜酒の製造を始めたことが始まりだった。1799年に最初の蒸留所が出現しそれ以降、五大湖地方や、セント・ローレンス河畔に蒸留業者が現れウィスキーの製造が盛んになった。
 当初はライ麦を使ったウィスキーが主流だったが、アメリカとの貿易を通してコーンを主体としたライトなウィスキーとのブレンドをすることで独特な柔らかさと軽さのあるウィスキーへと変貌した。
 1920年にアメリカで『禁酒法』が施行され、アメリカ国内では密造の悪酒が横行していた。カナディアンウィスキーはカナダ政府により1875年に制定された「ウイスキー規制法」に穀物使用、連続式蒸留の指示、三年間の熟成義務などが定められていたため、良質なものが多く、一気に人気を獲得した。禁酒法が施行されアメリカ国内の生産やアイリッシュなど海外からの輸入は禁止された一方で、五大湖や広大な河川の警備は困難を極め、完全に密輸を排除できなかったようだ。
 現在ではカナディアンの70%はアメリカで消費されているほどだ。カナダにある蒸留所は11で実際に操業しているものは10箇所。Walkervill蒸留所のCanadiann Clubは特に有名で、C.C.という愛称で人気を博している。


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アメリカン・ウィスキー
 アメリカ合衆国で醸造されるウイスキーであり、その半分を占めているのが単一原酒による「ストレート・ウイスキー」である。基本的には連続式蒸溜機で蒸溜される。連邦アルコール法では、ウイスキーを30以上のタイプに細分して規定しているが、主に原料の違いで7種類に分類されている。

・ライウイスキー(ライ麦51%以上)
・モルトウイスキー(大麦麦芽51%以上)
・ライモルトウイスキー(ライ麦麦芽51%以上)
・バーボンウイスキー(とうもろこし51%以上)
・コーンウイスキー(とうもろこし80%以上)
・ホイートウイスキー(小麦51%以上)
・ライトウイスキー(溜出アルコール80%以上)

 バーボンウイスキーが代表的で生産量がもっとも多い。バーボンは他の地域のウイスキーではあまり用いないトウモロコシを原料としていることが特色だ。バーボン・ウイスキーはケンタッキー州バーボン郡ケンタッキー州バーボン郡が発祥と言われている。
 トウモロコシを主原料(51%以上80%未満)とし、ライ麦、大麦麦芽などを加えて、連続式蒸留機でアルコール分40度以上、80度以下で蒸留する。その後、内側を焼き焦が(チャー)したホワイトオークの新樽で2年以上熟成させたものだ。2年以上熟成された場合、名称の上に「ストレート」という語が付く。
 バーボンの中でも特にテネシー産のものは「テネシー・ウィスキー」として、市場では区別されている。
 テネシー・ウィスキーは蒸留機から留出したバーボン・ウィスキー原酒をテネシー州産のサトウカエデ(シュガーメープル)の炭でろ過(チャコール・メローイング)させた後に樽熟成させる。このろ過により他のバーボン・ウィスキーにはないなめらかな風味が生れる。「ジャック・ダニエル」(Jack Daniel's) はテネシー・ウィスキーの代表格だ。
 このほか、ブレンデッド・ウイスキー(バーボンやライなどのストレートウイスキーを、20%以上、残りを別のウィスキーでブレンドしたもの)がアメリカ国内でかなり消費されている。
 アメリカの蒸留酒は1607年にイギリス植民地が設けられてすぐに野生の果実を原料にして行われたのが始まりで、その後サトウキビの糖蜜からラムがつくられるようになった。1808年の奴隷貿易廃止とともにラムに代わり穀物の酒が主体となり始める。糖蜜が奴隷貿易と密接に関係していたためだ。
 穀類を原料とする蒸留酒の最初の記録は1640年に現在のニューヨークの一部にあたるオランダ植民地であったとされる。アメリカ産の穀物による蒸留所は、1770年にペンシルバニア州のピッツバーグに生まれたのが最初といわれる。ウイスキーの蒸留技術を持ったアイルランドやスコットランドからの入植者が、おもにペンシルベニアやバージニアなどに住み着いたことに起因する。彼らはそこでライ麦を育て、ライ麦のウイスキーづくりを始めた。
 とうもろこし主体のウイスキーは、1789年ケンタッキーの牧師エライジャ・クレイグ、1783年のエヴァン・ウイリアムズが最初とする説があるが、移住が盛んになった1775年頃から行われていたとみられている。独立戦争の出費を補うために、政府は1791年に蒸留酒に課税する法律を公布、農民の不満は高まって1794年にはいわゆる「ウイスキー戦争」が起こる。この暴動はまもなく鎮圧されたが、農民たちの多数は収税吏の手を逃れるべく西に移住し、ケンタッキーやインディアナ、テネシーなどに落ち着いた。このことがバーボンウィスキーがケンタッキーを中心に発展を遂げた所以である。
 バーボン・ウイスキーのバーボンという言葉は、独立戦争に多大の支援をしてくれたフランスのブルボン王家にちなんだもので、1848年頃から広く使われることになった。
 話は変わるが、アメリカン・ウィスキーの綴りはアイリッシュ・ウィスキーと同じ「Whiskey」である。南北戦争後の北米合衆国として初めて政府が公認したウイスキー蒸留所がテネシー州の中部台地にあるジャック・ダニエル蒸留所(Jack Daniel Distillery)で、その申請書に書かれていたのが「Whiskey」であった。それがそのまま酒税法に採用され,ほとんどのアメリカン・ウイスキーがそのように綴られるようになったということだ。申請書に書かれていた綴りがなぜ「Whiskey」だったのかという理由については様々な憶測があるが、それもまたアメリカン・ウィスキーの魅力の一つでは無いだろうか。


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ジャパニーズ・ウィスキー
 ジャパニーズ・ウィスキーの特徴はピート香がおさえられ樽熟成による香味が微妙なアクセントとなっており、口当たりはマイルドである。
 ジャパニーズ・ウィスキーの誕生は2人の男の活躍がなければありえなかった。その2人の男とは竹鶴政孝と鳥井信治郎だ。まずはこの2人紹介しよう。
 竹鶴政孝は1894年に広島の造り酒屋に生まれた。家業を継ぐべく大阪高工で醸造を学んだが、洋酒に興味を持ち始め1916年卒業を待たず当時の日本の洋酒業界の雄“摂津酒造”へ押しかけ入社を果たす。竹鶴はウイスキーづくりの魅力にとりつかれ、寝食を忘れて働き続ける。その甲斐あって、入社後間もなく主任に抜擢される。
 当時、イミテーション・ウイスキーの限界と本物のウイスキーをつくる必要性を感じていた摂津酒造の阿部社長は竹鶴の情熱と資質を見込んで、スコットランドへの留学を薦める。阿部社長の協力と竹鶴の揺ぎ無い情熱で両親を説得、竹鶴は本場のモルトウイスキーを勉強するために1918年、単身スコットランドへと旅立つ。
 グラスゴー大学に編入し苦学の末、本格的ウイスキー製造方法を修得して1921年に帰国。しかし、世界大戦後恐慌のため摂津酒造はウィスキーのための設備投資を断念。竹鶴は摂津酒造の退社を決意した。その後約1年、竹鶴は中学校の化学の教師をして過ごす。
 鳥井信治郎は1879年 大阪の両替商・米穀商の鳥井忠兵衛の次男として生まれる。1892年 13歳で大阪道修町の薬種問屋小西儀助商店 へ丁稚奉公に出て、和漢薬や洋薬のブレンド技術とともに洋酒を嗅ぎ分ける感性を磨いた。
 ウイスキーへの憧れを募らせながら1899年、20歳で独立。輸入ワインや缶詰を商う鳥井商店(後のサントリー)を創業。1906年「寿屋洋酒店」に改名、「赤玉ポートワイン」の開発に成功し、販売を始める。1921年株式会社寿屋を設立、「赤玉ポートワイン」の成功を機に長年の夢であったウィスキー製造に乗り出す。
 鳥井はイギリスから技師を招こうとロンドンに問い合わせるとウイスキーの権威であるムーア博士より竹鶴政孝を紹介された。摂津酒造で「赤玉ポートワイン」製造を担当していた優秀な技師だ。鳥井はすでに摂津酒造を退社して勤めに就いていな竹鶴の自宅を訪ね、ウイスキーづくりを頼むのだった。
 竹鶴は入社を決め、株式会社寿屋は1923年京都の山崎に蒸留工場を建て、本格ウイスキーづくりをスタートさせた。そして、1929年に初の国産ウィスキー「サントリーウイスキー白札」(現在のホワイトの前身)を販売した。これがジャパニーズウィスキーの始まりであった。
 その後日本人の嗜好にあうウィスキー作りを指示されたが、竹鶴はあくまで、スコットランドと同じ製法の「本物」にこだわった。
 1934年寿屋を退社、良質な水に加え、麦芽を乾燥させるためのピート(草炭)が取れる北海道余市町に念願の工場建設を決める。経営の苦労の末、1940年にあくまで本物にこだわった念願のウイスキー"ニッカ角瓶"が発売された。
 日本のウイスキーは、原料、蒸溜方法の面から見て、スコッチと同じタイプ。しかし製造技術の工夫、そして日本ならではの良質の水や気候風土の違い、日本人の繊細な味覚を基準にジャパニーズウイスキーの品質が確立され、世界に認められている。
 その他のメーカーについては以下に記述する。
 本坊酒造は、1909年鹿児島市に設立された焼酎メーカー。ウイスキー部門への進出は、1960年から。山梨県石和町にウイスキー工場を設立することでスタートした。1985年に長野県上伊那郡の駒ヶ岳の麓に、近代的な信州工場を建て精力的にウイスキーづくりに取り組んでいる。
 メルシャンは、1952年に長野県塩尻、1955年に長野県御代田にディスティラリーを建設。現在は御代田の蒸留所が稼動中である。
 キリンディスティラリーの蒸溜所がある富士山麓の御殿場は、冷涼な気候で自然の雪解け水に恵まれている。ここでは雑身のない酒質を重視したウイスキーづくりが行われている。


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