モルトウィスキーの製法

原料〜乾燥

 原料は二条大麦を使います。収穫された大麦は一定期間保管された後にスティーブ(浸麦槽)という容器で水に浸され、その後取り出し乾燥させまる。この操作を数回繰り返す事で大麦は発根します。根が出てきたところでモルトバーンと呼ばれる床に広げ均一にします。この操作をモルティングというそうですが、この作業によって発芽が促進されます。
 発芽後1〜2週間したところをグリーンモルトといいますが、この状態で発芽を止めます。発芽を止める方法は、この発芽をキルンと呼ばれる装置に移しピート(泥炭)を炊いて乾燥をさせることで行います。無煙炭や乾燥空気を併用するようですが、これらの混合比、乾燥時間で各ウィスキーの個性的な風味がでるそうです。

マッシング(糖液抽出)

 乾燥した麦芽を粉砕する作業を行います。この粉砕した麦芽の粒をグリストといい、その後篩い分けを行って粒の粒度をそろえます。
この粒度はウィスキーの出来栄えに大きく影響があるとされているようです。
篩い分けされたグリストに熱湯を加え攪拌する。約60度で酵素の働きにより澱粉から糖への分解が起こる。こうしてできた糖液を抽出する作業をマッシングといいます。

発酵

 糖液を常温の状態で保持し、これに酵母を加えウォッシュバックという桶に移す。そうすると数日で6〜8%の醸造酒(ウォッシュ)となります。発酵する時間が重大な要素であり、発酵時間が長いと酸味が出てくるということです。

蒸留

 ウォッシュを蒸留釜に移し蒸留します。蒸留は通常2回行うが、1回目の釜をウォッシュスチル、2回目の釜をスピリットスチルといいます。釜の種類は単式蒸留器を用いるが、この釜は量産性は劣るものの、アルコール以外の香気成分も同時に蒸留されとても個性の強い蒸留酒となるそうです。釜の上部で上記が一部凝縮して釜に戻る(分縮)が、この程度によって香気に微妙な差がでるため、各蒸留所で釜の形状は様々な工夫がされているようです。
蒸留された無色透明なモルト酒はニューポットと呼ばれ60〜70℃のアルコール濃度です。

熟成

 ニューポットは無色透明で味わいも荒削り。蒸留した後に樽詰めして熟成させることで独特の色調、味わい、風味が特徴付けられることになります。半年ほどで黄色みかかり、5年ほどするといわゆる琥珀色になります。
 熟成では樽成分の溶出、空気による酸化、エステル化、アルコールと水との会合、成分の蒸散という現象がウィスキーの味わいに大きく影響を与えていると言われています。
 樽成分の溶出ではリグニンやタンニンが溶け込み、リグニンは甘味、タンニンは酸化防止と琥珀色を引き出す働きがあります。
 空気による酸化でアルコールは脂肪酸となり、さらにアルコールとエステル化反応してエステルとなります。エステルは花の香りや果物の香りの成分としてよく知られていますね。水との会合とはアルコールと水がクラスター(塊)を作るという事です。ちょうどアルコールを水が囲むような形になりアルコール臭さがなくなってとてもまろやかな味わいになります。

 そもそもウィスキーはこの熟成という工程はなかったが、18世紀の後半にイングランド政府による重税逃れのための密造によって偶然に生まれたものとされています。密造酒はウィスキーをシェリー樽の中に詰めて隠したというのが事の始まり。密造時代が終わってもこの習慣は続き、熟成時間、熟成温度、樽の種類、詰め替えなどそれぞれの蒸留所で独自の手法で熟成を行っているということです。
 熟成樽はその大きさで名前で区別できます。バーレル、ホッグスヘッド、バッツという種類があります。バーレルは180L、ホッグスヘッドは230L、バッツは480Lという具合です。
 使用する木は主に楢(ナラ)、英語ではオークと呼びます。ウィスキー樽には樹齢100年以上のものが用いられます。ウィスキーは樽の成分が溶け込む事で独特の風味がつくため、用いる木の影響は絶大です。木を育む森の状態から木材の品質管理まで厳しくチェックする酒造メーカーもあるようです。サントリーやグレンもーレンジー、マッカランは独自の基準で審査しているという事です。
 ウィスキーに用いられるオークは北米のホワイトオーク、ヨーロッパのコモンオークが主流です。ホワイトオークはコモンオークと比べて漏れや蒸散が少ないなどの特徴があり、コモンオークは赤みのかかった琥珀色になるという事が特徴のようです。オークはが用いられるのは液体がしみこみにくいとか曲げやすく丈夫といった特徴があるからなのでしょう。ウィスキー樽のほかにかぐなどに多用されている木材ということです。ウィスキー樽は手入れをしながら50年から100年も使えるということですが、ウィスキー樽としての働きのあとは高級な家具に加工されたりバレルクラフトとして再利用されているようです。そんな家具も使ってみたいものですよね。

 熟成の話に戻りますが、熟成の始まった当初はシェリー樽での熟成が主流であったようですが、スペインからのシェリーが瓶詰めで輸入されるようになって樽の確保が難しくなったり、北米で1964年にバーボン法が確立するとバーボン樽が大量にあまって安価に手に入るようになったりということで、近年はバーボン樽が用いられる事が多くなったようです。初回はバーボン樽で熟成し、後にシェリー樽で熟成するなどという手法、また、バーボン樽熟成の原酒とシェリー樽熟成の原酒をバッティングするなど、様々なモルトウィスキーが誕生している様です。
 樽には新樽、古樽、リチャー樽というものがあります。新樽はその名の通り新しく作った樽で、木香が強くさわやかで、熟成が早いのが特徴。古樽は新樽とは異なり気品のある香りを育む。使用回数が多くなるほど色は薄く、木香は快くなるといいます。シェリー樽、バーボン樽もこの種になります。これらを使うとモルトウィスキーにシェリーやバーボンの色、香り、味が加わって深みのある熟成香りが得られます。リチャー樽というのは使用回数が多くなって熟成能力が落ちてきた樽を再び火入れして再生させたものです。
 このように熟成させる樽が異なるだけで同じ原酒でも異なった香りや味になるのが熟成の醍醐味でしょう。同じ銘柄でも熟成年数や樽の違いでいろいろな味わいを楽しむ事ができます。